面白い小説の書き方

面白い小説の書き方について

鍛冶について調べたい時に参考になる資料を紹介しておく

小説の題材として、鍛冶師が登場するケースは少なくありません。

鍛冶師は道具の王様、職人の王様とも呼ばれ、あらゆる職人が「使う道具」を作ることが多いから。

つまり、人が生活を営む以上、直接的に、間接的に鍛冶師は関わってくるためです。

 

ところが鍛冶について調べようと思うと、適切で分かりやすい資料がなかなか出てこない

私は自著『青雲を駆ける』という本で、主人公を鍛冶師として起用したため、資料探しには最初ずいぶんと苦労した。

 

どのような本を読んでいけば良いのか、同じ道を歩む新人の方々にぜひ道しるべを残しておきたい、という思いで、この記事を書いています。

少しでも参考になれば幸いです。

 

1.鍛冶屋の教え 横山祐弘職人ばなし

最初に読むのにこれほど良い本はない。

一人の鍛冶師(野鍛冶)に話を聞く形式で、ながらく文庫本が絶版になっていたが、このたび電子書籍化した。とてもめでたい。

話し言葉を用いているため、とても読みやすい。

また感覚的な部分を多く知れたり、当時の風俗や習慣についても知ることができるので、学術的な意味合いよりも、生きた文章につなげやすい利点がある。

ただ、一人の鍛冶師にだけ聞いているので、情報が偏りやすい、という難点がある。

そこで次に同じ作者からの一冊が役立つ。

 

2.日本鍛冶紀行-鉄の匠を訪ね歩く

同じく著者はかくまつとむ氏。日本中の鍛冶屋を回った取材をした労作で、大きな写真とびっしりと細かい文字でインタビューがされている。

日本において、すでに絶滅危惧種とも言える職種だが、これほど多くの種類の鍛冶屋がいるのかと驚く。そして、その生き様を見ることになる。同じように人の手の道具を作っているのに、考え方、取り組み方に同じところもあれば、全然違う所もある。

本に出てくる鍛冶師は年老いた人が多いが、その息子さん、お孫さん、あるいは弟子入りした人も見られて、まだもうちょっとは続くのかと、明るい希望が持てたりもする。(現代日本の庖丁などは海外ですごく人気が出ているのだ)

 

職人についてや道具について知識を得たなら、次は少し金属や刃物の性質について知っておきたいかもしれません。

難しい金属工学についてあれこれと学ぶのも良いですが、なかなか最初から頭に入ってこない。

そこで次の本がとても優れています。

 

3.刃物の見方

刃物の見方

刃物の見方

  • 作者:岩崎 航介
  • 発売日: 2012/05/01
  • メディア: 単行本
 

岩崎航介先生は刃物で有名な三条市で剃刀を制作した人。日本で初めて科学的分析によって、鍛冶の技量向上や製品開発を行ったとされる人とも言われています。

第一人者だからこそ言える歯に衣着せぬ物言いで、刃物の見方について縦横無尽に解説してくれて、楽しく読み終えた頃には十分な知識が身に付いている一冊。

戦前や戦後ぐらいの時代の話が多いのですが、鉄としての知識は今も大きくは変わりません。

岩崎先生は研究量も日本中の刀鍛冶に話を聞いたり、日本に残る鍛冶技術の家伝の書物を片っ端から読んだりと、研究家としての情熱もスゴイ人です。

 

最後にはもうちょっと世界的な鉄の歴史や、製鉄の原理について。

4.人はどのように鉄を作ってきたか

東京工業大学教授、東京芸術大学教授など歴々の経歴をひっさげ、一生を製鉄に費やした人の渾身の一冊。

特筆すべきは世界中の製鉄について概説を抑えてくれている一方、日本のたたら製鉄についても驚くほど詳細に記載されていること。

永田式レンジ製鉄法なんてのも開発されていて、これは電子レンジ加熱でも製鉄の一部が再現できることで、鉄の反応を身近に実験できるという手法。(論文もけっこう出てるので調べてみると面白いと思います)

個人的に面白かったのは、日本では鉄を採るには海や(種子島)河でということが多い。中国では規模が大きく露天掘りしているところもある。

ところが、湖で鉄の塊が採れる所があるらしい。

 

 5.刃物大全

刃物大全 (ワールド・ムック 965)

刃物大全 (ワールド・ムック 965)

  • 発売日: 2012/12/18
  • メディア: ムック
 

 新本がもうなくなって、中古しか売ってないのがもったいない一冊。

いろいろな刃物について、特集されている。

一つ一つは専門書ほど詳しくはないけれど、それでも押さえておきたいポイントがいっぱいあって、鍛冶の題材、アイデアとして使えるところが多い。写真資料も豊富でとても診ているだけで楽しい一冊。

こちらは資金に余裕があればぜひ手に入れて欲しい。

もしかしたらどこかに新本も残っているのかも。