面白い小説の書き方

面白い小説の書き方について

ラノベ作家になって、「富樫仕事しろ!」と言えなくなった話

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 冨樫義博HUNTER×HUNTER」が、4月9日発売の週刊少年ジャンプ19号(集英社)より休載する。4月2日に発売された18号で告知されたらしい。
 これでいったい何度目の休載だろうか。
休載の理由は体調不良だったり、作者都合だったりと色々だが、かつてネット上に出回ったモンハンで遊んでいる、などという噂を聞くと、過去の私は「富樫仕事しろ!」と言っていたように思う。

あなたにもそのような経験はないだろうか?

 ハンターハンターは名作だ。

だからこそ当時、一人の『消費者』として、彼の作品を愛し、続きを焦がれた。
それゆえに、『作者の怠慢』に強い怒りを感じていたものだった。

 今でも、休まずにもっとどんどん描いて欲しい! という想いはある。
だけど、一消費者から、提供する側になったことで、とても「富樫仕事しろ!」とは言えなくなってしまった。

 

 私はヒーロー文庫から『青雲を駆ける』というライトノベルを出版している兼業作家だ。
出版が決まる以前も、ずっと趣味で小説を書き続けていた。
出版以前だけでもおよそ10年になるだろうか。その間、私の筆は一度も止まることがなかった。
書きたいと思ったことを書く毎日は、そこに技量が伴っていたかは別問題として、非常に楽しかった。

 

 そんな生活が、ある日変わってしまった。
書きたいという想いはそのままに、いや、むしろより強くなっているのに、書けなくなってしまったのだ。
いわゆるスランプというものだ……。

この僅か4文字の中には、恐ろしいまでの濃密な、リアルな苦しさがある。

 

 執筆用のソフトであるテキストエディタを起動させながら、少しも文章が進まない。
思ったような展開にならず、書いては消しての毎日で、一日が経って結局100字も進んでいないという経験も珍しくなかった。
 時には二時間ほどパソコンの前に座ったまま、一文字も書けないで過ごした日もあった。

 仕事が思うように進まない経験は誰にでもあると思う。

 では、これが二年も毎日続いたら?

 

 どうして書けないんだろうか。
なぜ、思ったように書けないのか。
自分は一体どうしてしまったんだろう?
自分の状態が情けなく、同時に怖かった。自分はもう、作家として壊れてしまったのかもしれないと思った。それが何よりも悲しかった。

 パソコンの電源を落とすと、げっそりとやつれた自分の顔が、真っ黒なブラウザに移った時、もうダメかもしれないな、と思った。

 

 困ったことは書けないことだけではない。
 そうして悩みながらも、書くこと以外の構想を練ったり、キャラクターを考えたりといった作業は頭の中でずっと、ずうっと続いているのだ。朝起きたときから、寝る直前まで。新しいアイデアが思い浮かび、これは良い、これは良くないと自分で批評しながら、練っていく。
 書きたい事がありながらも、手が動かない。

 

 自分はこんなもんじゃない。
もっとできるはずなんだ。
そんな声がどこからともなく聞こえてくるようだった。

 

 日々は驚くほど速く流れてしまう。
それまで兼業であるからと、半年に一冊のペースで出版できていた本が、一年が経っても、半分すら進んでいなかった。


そのとき、私の普段の言動は、できるだけ変わらないようにしていた。
Twitterでは、スマホゲームのグランブルファンタジーに傾倒しているような発言もしていた。
「続きはまだ?」「進捗どうですか?」
そんな声をたくさん聞いたものだったが、私はつとめて遊びほうけているように振る舞った。
たぶん、書けなくなったことを認めたくなかったのだ。

 

そんな時に、冨樫先生の休載のニュースを目にした。

あれだけ描けば売れる作家だ。

受けるプレッシャーも並大抵のものではないだろう。

気づけば私は「富樫仕事しろ!」とは言えなくなっていた。

 

書けなくなる原因とは何だろうか?

ある日、私は再び書けるようになった。

書くことが楽しかった。久々に感じる楽しさだった。

それと同時に、もしまた書けなくなったらどうしよう、という恐れが常にある。

それは胃の腑のあたりにいつもどっしりと私を脅かしている。

 だからこそ、書ける時にいっぱい書き尽くしたいと思っている。

 

 

幸いなことに、来月末か、そのもう少し先に、私の最新刊が出るはずだ。

お仕事の依頼をいただいたりもできるようになってきた。

もう一度出版の世界で戦っていきたい。

 

 

青雲を駆ける (ヒーロー文庫)

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HUNTER×HUNTER 35 (ジャンプコミックス)

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